「竹駒」
ラーメン界の文化財とも言うべき店である。花巻市の繁華街近くにひっそりと佇んでいる。
この頃は休業が多いと聞いていたが、営業していてほっとした。
店主の鈴木美枝子さんが一人で切り盛りしている。
この店が1954年に創業した時は14歳で、セーラー服のまま店を手伝っていたこともあったそうだから、80歳を超えておられるのだろう。
古い民家風の建物の暖簾をくぐると、店内は無人だった。
後からやって来た常連さんが声をかけると、奥からカウンターの前の廊下(カウンターの前は住居の廊下という珍しい構造)を通って店主が出てきた。常連さんと禅問答のような会話をした後、ラーメン作りに取り掛かる。
最近、薪を使う料理屋が流行っているが、ここは昔から薪釜で、薪がはぜる音が聞こえてくる。自ら薪を割り、煙突も掃除する。
薪釜は火加減が難しく、風の強い日は休業になることもあると言う。
ラーメン作りは実に手際良く、丼をお湯で温め、平ざるで湯切りをして、スープの上の脂をすくって丼に足したりしている。
一見、何の変哲も無い中華そば(なんと350円)だが、心を込めて作ったことが伝わってくる。
店主は実に矍鑠としていた。1日でも可能な限り続いてほしい店である。
(河田剛)