
「武蔵屋食堂」
鳥取市の中心部に店を構える武蔵屋食堂は、1912(明治45)年創業の100年を超える老舗である。蕎麦やうどん、丼物などがメニューに載る気取りの無い店だが、実は鳥取市のご当地ラーメン「素ラーメン」の元祖でもある。「素ラーメン」は二代目主人が1955(昭和30)年頃、学生などに満腹になってほしいと考案したメニューで、昆布と鰹から取った和風出汁に中華麺を入れ、かまぼこ、天かす、もやし、ネギをトッピングしている。

この「素ラーメン」は市役所、県庁や学校の食堂などに採用され、鳥取市民に親しまれて来た。市役所の旧庁舎の「素ラーメン」は「孤独のグルメ」TV版でも取り上げられた。
武蔵屋食堂では、2016年から麺を鳥取県産小麦による自家製麺に切り替えている。じんわりと旨味が滲み出る和風出汁とコシのある麺が相まって、シンプルながら後を引く一杯である。和風出汁が驚くほど新鮮に感じられる。鳥取に出かけた際には是非訪問されることをお勧めしたい。
(河田剛)
