日本ご当地ラーメン総覧vol.8

日本ご当地ラーメン総覧

第8回『北関東のご当地ラーメン』

【茨城県】

茨城県では、県央を中心に様々なご当地ラーメンがある。キャベツ・カボチャ・ニンジンなどの野菜に、レバーを合わせた甘いあんかけが乗る「スタミナラーメン」は、ひたちなか市と水戸市などを中心に広がっている。あんかけをラーメンの上に乗せる「スタミナホット」と、水で締めた麺の上に乗せる「スタミナ冷やし」がある。好みが別れるレバーを外して鶏ささみを入れたり、ホルモンを入れるなど、店によって個性を出している事もある。

水戸市では、「水戸藩らーめん」という取り組みもある。「水戸黄門」で知られる徳川光圀が、日本で初めてラーメンを食べた人物として長い間語られてきたが、その時に食べたであろうラーメンをイメージして作られたもの。麺にレンコンの粉を練り込み、「五辛」と呼ぶ5種類の薬味を提供している。

県北部の常陸大宮市にある「中国飯店」で考案されたとされる「豆腐みそラーメン」は、県北の内陸部で散見される。ブレンドした味噌に挽肉などを加えた味噌ダレを使い、辛さは控えめで皆に食べやすい一杯になっている。

県西部、筑西市の下館駅周辺には、「下館ラーメン」と呼ばれる店が集中している。鶏ガラメインの澄んだスープに濃口醤油を合わせていて、具に鶏チャーシューを使うのが特徴。近年では「鶏皮」をトッピングに加える店もみられる。

水戸:スタミナラーメン吟月(スタミナラーメンホット)

【栃木県】

栃木県で存在感が強いのが「佐野ラーメン」。大正期の洋食店「エビス食堂」で働いていた中国人シェフが、麺打ちの製法を伝えたのがきっかけとされる。その時に教えられた、青竹で打ってコシを増した平打ち麺が特徴。太さは店によって異なる。スープは鶏ガラや豚骨を使ったあっさりした醤油味。佐野市を中心に栃木県南部、群馬県や茨城県、埼玉県にもこのスタイルのラーメン店が広がっている。佐野市内のラーメン店が集まった「佐野らーめん会」が組織され、後継者を目指す人に技術を伝承する「佐野らーめん予備校」といった取り組みも行われている。

栃木市の「夕顔ラーメン」は、夕顔の果実の粉を練り込んだ麺が特徴。「夕顔ラーメン会」が組織され、現在は市内の中華料理店3軒で提供されている。栃木県は、日本の「かんぴょう」の8割を生産していて、その原料が夕顔の実である。

県北の塩原温泉郷(那須塩原市)では、「スープ入り焼きそば」が伝えられている。ウスターソースで炒められた焼きそばに、鶏ガラスープをかけたもの。近隣の食堂数軒で提供されている。

佐野:麺や大山(ワンタンメン)

【群馬県】

県南の藤岡市には、太く縮れた麺をあっさりした醤油味のスープに入れた「藤岡ラーメン」がある。1990年代には「上州藤岡ラーメン会」が話題を集めた。現在は市内の食堂や中華料理店などがそれぞれのラーメンを提供している。

また、太田市や桐生市といった東毛地域には「東毛手延べラーメン」と呼ばれるラーメンがある。栃木県佐野市とも近く、佐野ラーメンの影響を受けた店も少なからず存在するエリアだが、青竹打ちではなく、麺打ち台の上で最後まで手で延べる麺が特徴。滑らかで喉を滑っていく麺の食感が独特。発祥店とされる、太田市の「喜満 本店」が2025年に閉店するなど、提供する店舗が減少しているご当地ラーメンでもある。

(山本剛志)