日本ご当地ラーメン総覧vol.9

日本ご当地ラーメン総覧

第9回『埼玉県・千葉県のご当地ラーメン』

【埼玉県】

さいたま市と上尾市には「スタミナラーメン」がある。茨城県にも同じ名前があるが中身は別。豚挽肉とニラ・タマネギを炒め、辛く味付けたあんかけを、細麺の醤油ラーメンの上に乗せている。大宮の「漫々亭」で1975年頃に生まれ、系列店の浦和「娘娘」や、両店の暖簾分け店で広まり、このエリアで知られるようになった。一部店舗では、辛いあんかけをご飯にかけた「スタカレー」も提供されている。カレー味ではないがこの名が定着した。

また、さいたま市岩槻区には「豆腐ラーメン」がある。岩槻公園の「レストラン大手門」で1970年に考案されたメニューで、ひし形に切った豆腐と挽肉を使った醤油味のあんかけを、醤油ラーメンの上にかけている。麻婆豆腐のような見た目ながら、辛さがほとんどないのが特徴になっている。「埼玉B級ご当地グルメ王決定戦」で優勝したり、監修したカップ麺が販売された事で知名度を高めている。

他には、上尾市の酒造メーカーによる酒粕を活用した冬季限定の「酒粕味噌ラーメン」や、狭山茶の粉を小麦粉に練り込んだ鶴ヶ島市の「茶ラーメン」など、地元の特産物を取り入れたご当地ラーメンも見受けられる。

 

埼玉県:娘娘(スタミナラーメン)

埼玉県:娘娘(スタミナラーメン)

【千葉県】

千葉県の房総半島には、歴史ある3つのご当地ラーメンがある。「竹岡式ラーメン」は、内房は富津市の漁港町、竹岡で生まれた独特な醤油ラーメン。チャーシューを煮込んだ醤油ダレと薬味の刻みタマネギが漁師に馴染まれて広まった。発祥とされる「梅乃家」は乾麺を茹で、スープではなく「お湯」で割る事で知られているが、「竹岡式」を名乗るラーメン店でも、生麺や鶏ガラスープを使う店も多い。

外房の勝浦市には「勝浦タンタンメン」がある。「江ざわ」が考案したその味は「タンタンメン」の名が入りつつも、中華料理の担々麺でお馴染みの芝麻醤は不使用。醤油味のスープの上に、ラー油や唐辛子で炒めた玉ねぎと豚挽肉を乗せている。この味が漁師や海女をはじめとした勝浦市民に愛された事で、市内の飲食店でジャンルを越えて提供されるようになった。その知名度ゆえ、芝麻醤を使う担々麺を「胡麻入り担々麺」として販売する中華料理店もある。「B-1グランプリ」での優勝経験もある「勝浦タンタンメン」は、地域団体商標として登録されている。

また、房総半島の中部、長柄町と長南町にある「アリランラーメン」は、タマネギをベースにニンニク・豚肉・ネギを炒めたピリ辛のラーメン。発祥の「八平の食堂」は峠の途中にあり、朝鮮半島の伝説にある「アリラン峠」を越えられるようなスタミナがつくラーメンという意味で名付けられた。アリランラーメンは親族が経営している店以外にはないが、このスタイルにインスパイアされたラーメンが、東京近郊で広まりつつある。

 

千葉県:らーめん八平(アリランらあめん)

千葉県:らーめん八平(アリランらあめん)

これら「千葉3大ご当地ラーメン」の他にも、様々なご当地ラーメンが存在する。船橋市では、中華料理店で提供されていたスープ入り焼きそばからインスパイアされた、ソース味スープの「船橋ソースラーメン」が、茂原市には豚バラ肉を盛りつけた「もばらーめん」が、袖ヶ浦市には、「大衆中華ホサナ」が発祥で、牛乳ベースに生姜を加えた「ホワイトガウラーメン」がある。香取市小見川の「小見川カレー焼きそば」は、焼きそばを名乗りつつ、ソース味にカレー粉を加えたスープが入る。カレー粉の缶と共に配膳され、更に辛くできる店もある。

(山本剛志)