100年後に残したい名店vol.17

「うのき食堂」

秋田市の北隣、五城目町と南隣の大仙市大曲には、天ぷら中華と呼ばれるメニューを出す店が数軒ずつ存在する。今回はその中でも老舗である五城目町のうのき食堂を訪ねてみた。秋田駅からバスに乗り、夏の田園地帯を抜けて五城目バスターミナルに到着すると、五城目在住の高校の同級生が出迎えてくれた。

うのき食堂 内観

友人によると、徒歩数十秒の地域に天ぷら中華を提供する店が3軒あり、天ぷら中華の「特区」とも呼ばれているようだ。うのき食堂は満席で、少し待った。この店は友人の子供時代には既にあって、かなり長い間営業しているようだ。現在は高齢の女性店主とお孫さんの二人で回している。店主は高齢であるにかかわらず、動きに全く無駄がない。

店内は古い清涼飲料の広告があるなど、昭和のままである。メニューは古色蒼然としているが、中にはお孫さんが新たに始めたものもあるそうだ。天ぷら中華の大盛を注文した。大盛にしたのは量が軽めなこともあるが、片口に入った追いスープがつくからである。

うのき食堂「天ぷら中華 大盛」

細縮れ麺に醤油味の和風出汁のスープを合わせ、厚みのあるチャーシュー、メンマ、ナルト、海苔、ネギを乗せる。肝心の天ぷらは、海老天のような一般にイメージされる天ぷらをトッピングするのではなく、天ぷらの衣を円形に乗せている。この脂が徐々に溶け出し、スープがまろやかになっていく。追いスープは元々スープの量が足りなくなった時の配慮らしいが、友人のお勧めは丼のスープと交互に飲むことであった。ピュアな追いスープはかなり蕎麦屋のつゆに近い。時々飲むと舌がフラットになる。全国でも珍しいユニークなスタイルである。

その地に根ざした店で旧交をを温める。まさしく地方のラーメン店巡りの醍醐味であった。

(河田剛)

100年後に残したい名店:店舗情報

店名うのき食堂
住所〒018-1722
秋田県南秋田郡五城目町鵜ノ木15-11
電話番号018-852-3226
※店舗情報は2023年08月現在のものです