読者ラーメンコラムvol.9

好来系

「愛知の隠れたご当地ラーメン「好来系」は身に心に染み渡る味」

どうも、元芸人ラーメンライターのさいまさです。

愛知県のご当地ラーメンといえば「台湾ラーメン」が有名ですよね。発祥の店は、味仙という中華料理店。転勤で名古屋に来てから5年が経つ筆者ですが、もう何度行ったかわからないくらい、あの燃えるような辛さに夢中になっています。

とはいえ実際に住むまでは、「みそかつ」「味噌煮込みうどん」などご当地グルメはあるものの、愛知のラーメンが美味しいというイメージはありませんでした。ところがどっこい、実際に住んでみると愛知県は地元の方々に長く愛される隠れたご当地ラーメンの宝庫。

今回は東海地方で年間200杯のラーメンを食べる私が、愛知の隠れたご当地ラーメン「好来系」をご紹介していきたいと思います。

発祥は「総本家 好来道場」

「好来系」ラーメンの発祥は、名古屋駅から桜通線で15分ほどの吹上駅から少し歩いたところに店を構える「総本家 好来道場」。60年の歴史を持つ名古屋の名店です。木の板に書かれた「松」「竹」「寿」など趣のあるメニューや「格言」もまさに道場という感じで、独自の文化を形成しています。

「薬膳ラーメン」とよばれる醤油ベースのやさしいスープと、食べごたえのある太めのメンマが特徴。薬膳ラーメンと言いつつも店主いわく薬膳は使っていないらしく、スープは鶏ガラと豚骨、たまねぎ、ニンジンやにんにくなど比較的ベーシックな材料で取っている。ご当地グルメ「きしめん」にも使われている「ムロアジ」が入っているのは名古屋っぽい。
これらの材料から6時間以上かけて炊いたスープは、一口すするとやわらかい独特の深みが体の中にじんわり染み渡ってきます。加水率高めの中太麺も、。

メニューは、いわゆるチャーシュー麺の「松」が基本メニューで、チャーシューをさらに増量した「寿」、メンマ増量の「竹」、などというラインナップ。おすすめの食べ方は、麺を半分くらい食べたあとで卓上の「高麗人参酢」を一回しすると、スープに酸味とまろやかさが出てこれまたウマシ。
さらにもう半分食べたところで「自家製ラー油」をたらりと垂らすと、スープがピリッと引き締まって香ばしさもプラスされ、さらに箸がすすみます。

店内の至るところに並ぶ「格言」がすさんだ心に染みる

“本当の幸せ者とは生涯に心から笑った回数の多い人”

好来道場の壁にそっと佇む言葉をみて、少し昔のことを思い出しました。多くの人を笑わせたいと22歳でお笑い芸人を志して、4年間活動したにもかかわらず大して誰も笑わせることのできなかった筆者。
金も才能も無い辛い日々に、いつしか自分自身も笑うことを忘れていたような気がします。

お金や地位など人間の欲望はとどまることを知りませんが、他の人にどう思われるかではなく「自分がどれだけ心から笑えたか」が人生の豊かさを決めることを、好来のやさしいラーメンをすすりながら気づくことができました。

他にもたくさんの言葉が並んでいて、疲れた心を癒やし、人生の行く先を指し示してくれるのも好来の魅力の1つ。
きっとあなたにも刺さる言葉が見つかるはずです。

暖簾分けした好来系の店は15店以上

唯一無二の味を生み出し続けてきた「好来道場」。
その味に惹かれて弟子入りした人も多く、現在では愛知県の至るところに暖簾分けしたお店が存在します。
ざっと調べただけでも15店舗ほどあり、それぞれのお店が好来道場の味を踏襲しながらオリジナリティを発揮して、奥深い「好来系」文化を形作っています。
筆者も全て回れたわけではないですが、本陣駅の「拉ノ刻」、久屋大通駅の「蔘好来 」、あの史上最年少でプロ騎士になった藤井聡太氏も訪れたことのあるという大曽根駅徒歩5分の「陣屋」が、個人的好み。

ぜひ愛知に足をお運びの際は、好来道場だけではなく暖簾分けしたお店もチェックして自分好みの好来系を探してみてください。

人生に疲れたら好来へ行こう

今回は、愛知県の隠れたご当地ラーメン「好来系」をご紹介しました。

東京で好来系が食べられる店はないかなとざっと調べてみたのですが、どうやら好来系を前面にだして営業しているところは無い模様。台湾ラーメンで有名な「味仙」は東京にも複数店舗ありますが、好来系は愛知でしか食べられない正真正銘のご当地グルメ。

もし人生に疲れてしまったら、心に体にやさしい好来系のラーメンを思い出して、頑張るためのエネルギーを補充しにきてくださいね。

(さいまさ)