ザッツ☆エンターテイン麺ト!vol.8

ラーメン坊や

ラーメン坊や

『ラーメンと歌 その2』

この連載の第1回では、ラーメンをこよなく愛する双子の演歌歌手、こまどり姉妹を取り上げた。こまどり姉妹は「涙のラーメン」(1963年)、「こまどりのラーメン渡り鳥」(2014年)と、ラーメンをタイトルにした曲を2曲もリリースしているが、ラーメンにちなんだ曲は他にも存在する。

俳優としても知られる佐川ミツオ(佐川満男)が「涙のラーメン」より早い1961年に発表したのが「ラーメン坊や」である。歌詞には様々なラーメンのメニューが織り込まれているが、サンマーメン、天津麺など中華系のものばかりで、ご当地ラーメンが無いことが時代を感じさせる。

それから20年以上後に発表された矢野顕子の「ラーメンたべたい」(1984年)はラーメンたべたいのフレーズが連呼される異色の曲である。2017年には人気ジャズピアニスト上原ひろみとのコラボでこの曲が入ったライブアルバム「ラーメンな女たち」がリリースされた。

 

 

ラーメンな女たち

ラーメンな女たち

シャ乱Qの「ラーメン大好き小池さんの唄」(1996年)は小池さんの名前をシャウトするハードなロックである。大塚愛の「ラーメン3分クッキング」(2005年)は演奏時間もぴったり3分という面白い趣向の曲である。馬場俊英の「ラーメンの歌」はラーメンを通して人生の哀歓を歌っている。スガシカオの「深夜、国道沿いにて」(2019年)は同系の曲と言えなくもないが、かなり暗い内容を含んでいる。

ラーメン好きにはお馴染みのファミリーユニット、あらかわ家がラーメンの日のイベントで「らーめんたべよう」を歌唱したのは記憶に新しい。

お笑い畑の人々もラーメンにちなんだ曲を歌っている。植木等(ハナ肇とクレージーキャップ)は「これが男の生きる道」(1962年)で飲んで騒いでラーメンを食べることを繰り返すサラリーマン生活の切なさを歌っている。この曲は映画「にっぽん無責任野郎」の主題歌としても使用された。ザ・ドリフターズは「ドリフのズンドコ節」(1969年)の2番では、学食の娘が出してくれたラーメンのしょっぱい味がフィーチャーされている。コミックソングで忘れてならないのは嘉門達夫であろう。近年、「ラーメンに捧ぐ」(2016年)、「ラーメンパワー」(2019年)を連続して発表している。グルメとして知られるだけあって、ラーメン讃歌とも言える内容になっている。

これが男の生きる道

これが男の生きる道

子供向けの曲でもラーメンは取り上げられている。「アンパンマン」の作者、やなせたかしは作曲家いずみたくと組んで、1976年から童謡集「0歳から99歳までの童謡」を制作した。その中の一曲が井上真由美が歌う「ラーメン心のうた」である。ラーメン好き好きかという台詞が印象に残る。NHK「おかあさんといっしょ」で2013年に放送された「チュルチュルチュルルン」はほぼ全編がラーメンである。また、NHK「みんなのうた」では、1991年に「ウマウマラーメン」が放送された。作詞、西尾尚子、作曲、三枝成彰で亀丘理絵歌うこの曲は親子がインスタントラーメンを作る様子を歌にしている。2000年に放送された「ラーメンどんぶり流れ唄」は作詞、もりちよこ、作曲、湯原昌幸で、湯原昌幸と城之内早苗が歌唱を担当している。ラーメン丼を主人公に見立てたユニークな曲である。

ここまではプロの歌唱による曲だが、「せたが屋」の前島司店主と「気むずかし家」の塚田兼司店主は自らのYouTube番組「ラーメン侍」の公式ソングとして「今日はチャーシュー麺にしよう」をリリースした。ラーメン店主の立場からラーメンを歌い上げている。前島店主の演歌歌手ばりの歌唱力が聴きどころである。

音楽ではないが、昭和初期に「うどん屋」を改作した「支那そば屋」を発表した。これはSPレコードになり、CD化もされている。支那そばに客が大量に胡椒をぶちまけてしまう面白い噺である。

人生の様々な場面にラーメンが存在している。これからもラーメンにまつわる歌は登場することだろう。

(河田剛)