ザッツ☆エンターテイン麺ト!vol.9

『ドラマの中のラーメン』

TVドラマの中に登場するラーメン店(中華料理店)として有名なものは1990年から2011年にかけてTBSで断続的に放送された「渡る世間は鬼ばかり」の「幸楽」であろう。泉ピン子が演じる小島五月の嫁ぎ先がこの店であった。創業者の義父母は青森から上京し、屋台から始めて新宿区の曙橋に店を持ち、その後改装を経て立派な建物になっている。その「幸楽」のラーメンは中太麺に鶏ガラベースのあっさり醤油スープ、チャーシュー、メンマ、ナルト、ワカメなどがトッピングされているという設定であった。この設定を基に、赤坂サカスのオープニングイベントで「幸楽ラーメン」が提供された。また、サンヨー食品や日清食品冷凍が「幸楽ラーメン」を商品化、販売した。

フジテレビで1981年から2002年にかけて、連続ドラマ、ドラマスペシャルの形で放送された「北の国から」の中で屈指の名シーンとされているのが、「北の国から‘84夏」で食べかけのラーメンを下げようとする店員に五郎(田中邦衛)が「子供がまだ食ってる途中でしょうが」と、きつい言葉を投げつける場面である。これは富良野にあった「三日月食堂」で撮影されているが、この店は既に閉店した。富良野では現在も「子供がまだ食ってる途中でしょうがラーメン」が販売されている。

1979年にNHKで放映された向田邦子「阿修羅のごとく」は竹原家の父(佐分利信)と四姉妹(加藤治子、八千草薫、いしだあゆみ、風吹ジュン)を中心にした物語である。ある日、無名のボクサーと同棲している四女咲子(風吹ジュン)が帰宅すると、男は別の女を部屋に連れ込み、玄関先にはラーメン丼が2つ置かれていた。一つは空だったが、一つは飲み残しスープに口紅が付いたタバコが捨てられていた。部屋にはいかにもだらしない女がいた。咲子は女連れ込んだことよりも、二人でラーメンを食べていたことが許せないと男に詰め寄る。ラーメン丼を小道具に男女の自堕落な人生を表現する、食べ物の描写に徹底的にこだわった向田邦子の面目躍如ともいえる場面だった。

 

 

 

2000年から2005年にかけて、テレビ朝日の土曜ワイド劇場枠で5回放送された「ラーメン刑事「龍」の殺人推理」は、神田正輝演じるラーメン刑事龍鉄平が喜多方、旭川、札幌、博多などの有名ご当地に赴任し、事件を解決するというものだった。

NHKで2003年に放送された「風子のラーメン」では、思い詰めた表情でラーメンを食べていた風子(市原悦子)を元刑事の店主(大滝秀治)が雇い、それが殺人事件の解決に繋がっていく。

フジテレビで1996年に放送され、大ヒットした木村拓哉、山口智子主演の「ロングバケーション」では、ラーメンを食べるシーンが頻繁に登場した。撮影場所は新富町近くにあった「萬金」だが、数年前に閉店している。

日本テレビで2002年から2009年まで連続ドラマ、ドラマスペシャルで放送された「ごくせん」でヤンクミ(仲間由紀恵)の教え子として全シリーズに登場したクマ(脇知弘)の実家は「熊井ラーメン」というラーメン店で、卒業後は店を継いでいる。ストーリーに絡むこともあった。撮影が行われたのは、府中にあった「中華料理十五番」だが、この店も残念ながら閉店してしまった。「熊井ラーメン」は一時カップラーメン化され、販売されたこともある。

これらのドラマでは、ラーメンはあくまで設定の一部だが、最近になってラーメンを全面に押し出したドラマが放送されるようになっている。

2018年のNHK連続テレビ小説「まんぷく」はインスタントラーメンを生み出した安藤百福夫妻(安藤サクラ、長谷川博己)をモデルにした一代記であった。

鳴海なるの「ラーメン大好き小泉さん」はラーメン好きの女子高生を主人公にしたコミックで、フジテレビで2015年に、早見あかりが小泉さんとして深夜枠で4回放送され、さらに2016年に2回、2019年に1回スペシャルが放送された。2020年には「二代目!」として主演が桜田ひよりに交代し、2022年にも単発で放送された。実在のラーメン店が多数登場した。

テレビ東京で2020年に放送された「行列の女神〜らーめん才遊記」は久部緑郎(作)、河合単(画)の原作漫画の登場人物で、ネット等ではラーメンハゲと呼ばれ人気だったラーメンコンサルタント芹沢を女性に置き換え、鈴木京香が主演した。劇中のラーメンは「中華そば勝本」が担当した。

CSのチャンネルNECOが制作し、津田寛治主演で2021年に6本が放送された「ラーメン刑事」は「かづ屋」、「飯田商店」など実在のラーメン店を舞台に、ラーメン好きの刑事が事件を解決する傍ら、最後にその店のラーメンの謎を解き明かすという構成で、ラーメンが大きくフィーチャーされていた。

幅広い世代に人気があるラーメンは、ドラマの素材として取り上げやすいと思われる。今後もユニークな形で登場してくれることだろう。

(河田剛)