読者ラーメンコラムvol.21

「泡系ラーメンのお店」

ある夏の日、私は大阪出張に行くこととなった。出張の楽しみといえばもちろん食事だ。普段の私ならばこのお店のこれを食べるぞと決めて、スケジュールも調整して出張を楽しむのだがこの時ばかりは何も決めていなかった。ちょうど梅田駅周辺で仕事が終わり、さて何を食べようかとラーメン店を調べていると、なにやら「泡系ラーメン」のお店があるらしい。
そういえば泡系ラーメンのお店を東京で見た記憶があまりなく、今まで食べたことがなかった私はとても興味が湧き、お店へと歩き始めた。
そんなこんなで私が向かったお店は「ふく流らーめん轍」というお店。

 

 

ふく流らーめん 轍

「リンクス梅田」という商業施設の地下1階にあるお店だ。店舗に近づくと店名とともに「ミシュランガイドビブグルマン」の垂れ幕が真っ先に目に入る。高田馬場に総本店を構える「ふく流らーめん轍」は2017年にビブグルマンに掲載されたお店なのだ。私がラーメンのお店を調べていた時も、このビブグルマンという言葉に惹かれて選んだ。

お昼時のピークタイムを少しはずしてお店を訪れたのだが、店内はお客さんが多い。やはり人気ラーメン店だということがうかがえる。
私は「ふく流らーめん」を注文した。丼が運ばれてくるとそこに見えたのは一面の泡。スープの表面が泡で覆われている。泡系ラーメンと言われる所以だ。その泡の下は比較的クリアなスープ。スープは特注の圧力釜で炊いた鶏白湯スープだ。さっぱりとしていて臭みもないが、泡と一緒に口に入れるとガツンとした味わいが口に広がると同時に、泡に含まれるゆずの香りが香ばしい。具材は豚肩ロース使用の低温調理チャーシューに小さくカットされた青ねぎと玉ねぎ。泡で一面真っ白になっているスープの表面にチャーシューのピンクと青ネギの緑色がよく映える。麺は泡が良く絡むつるっとした細ストレート麺。全体的にまろやかで美味しくいただいた。このビジュアルにこの味わいはやはりビブグルマンに掲載されるだけあるなと感心した。

そうして大阪で泡系ラーメンを食べた私は東京に帰っても泡系ラーメンを食べたいと思うようになった。

そこで私が東京で訪れたのが新宿御苑にほど近い「Ramen Afro Beats」というお店。
東京のラーメンって比較的味で直球勝負みたいなイメージがあり、あまりビジュアルに訴えるようなものが無かった印象ですが、調べてみると意外と増えてきているんですね!今回訪れた「Ramen Afro Beats」も2023年3月にオープンしたお店だ。

Ramen Afro Beats

このお店は祐天寺にある有名店「Ramen Break Beats」の姉妹店なんだとか。私は仕事の合間にこのお店を訪れた。ちなみに店名の「Afro Beats」は、創業者がアフリカの音楽ジャンルであるアフロビートに影響され名前がつけられたそう。

今回注文したのは「鶏白湯らぁ麺」。丼が到着しやはり目を引くのは、スープの表面を覆う泡。見た目からして独特で、期待が高まる。ただ大阪で訪れた「ふく流らーめん轍」とは見た目がやや違う。「ふく流らーめん轍」はスープ表面が白い印象なのに対し、チャーシューが2枚一面に広がり、パプリカパウダーが丼上部にかかっており、全体的に赤い!という印象だ。
少し先走ったが、具材は前述の国産豚ロースのスモークチャーシューに国産豚肩ロースの醤油煮込みチャーシュー、九条ねぎ、紫玉ねぎ、カリカリのフライドオニオンだ。とても具だくさんで嬉しい一品である。泡の下に眠るスープは「Ramen Break Beats」の地鶏のクリアスープとは異なり、濃厚で白濁とした鶏白湯スープ。博多水炊きで使用されていた歴史をもつ幻の地鶏、天草大王をふんだんに使用し地鶏の持つ香り・旨みを最大限に引き出し、圧力鍋を使わずに長時間かけてスープを作ったと店内には説明書きがあった。たしかに奥が深い濃厚なコクを感じる味わいであった。そして麺は三河屋製麺製の低加水細ストレート麺。店内の雰囲気も黒い壁面で落ち着いており、より高級感を味わえた。とても美味しくいただいた。

Ramen Afro Beats

大阪、東京で2つの泡系ラーメンを食べたわけだが、もともとは大阪で流行っていたようだ。理由は定かではないが、私の中では大阪のハイカラなイメージに泡系ラーメンのビジュアルがはまったのではないかと思う。

一方で東京はたくさんの人が溢れ個性が渋滞した結果、特徴ある泡系ラーメンもなかなか流行するまではいっていなかったのだと結論付けた。ただしこれからもっと流行っていくのではないかと私は思う。当初私は泡自体に味が無くスープが薄く感じるのではないかと思っていたが良い意味で裏切られたのだ。スープの味わいにプラスで濃厚さを感じさせる泡系ラーメンはとても美味しく、ビジュアルも相まってまさに芸術品だと思う。

泡系ラーメンが全国的に普及して人気ラーメンメニューのひとつになることを願っている。

(丸の内サラリーマン)