「篠田屋」
三条大橋を東山方向に渡ると、すぐに中華そばと書かれた提灯が目に入る。紅殻壁の古い町家に、しのだ屋という文字を染めた白い暖簾がかかっている。
この篠田屋は1904年(明治37年)創業というから、いわゆる百年食堂である。年配のご家族で営業されているようだ。
どれほど歳月を経たのかわからない扉を押しあけると、中には小上がりの座敷とテーブルが数卓。夕方6時過ぎたったが、お客は私以外に二組ほど、いずれもビールを飲んでいた。
壁に貼られた品書きの中で、中華そばだけが白地に赤で特筆されている。中華そばは注文後程なくして運ばれて来た。
鶏がらでとった簡潔なスープに、しゃっきりと茹で上げられた細麺、具はチャーシューにメンマ、葱である。全体の塩梅が実にいい。最初から胡椒がかけられているが、由緒正しい食堂の中華そばはこうでなくてはならないという気がして来る。
篠田屋に来たら、それだけで帰るわけにはいかない。もう一つの名物、皿盛が待っている。これはカツカレーのように見えるが、ご飯の上にとんかつとカレーうどんの餡をかけたもので味わいは全く異なる。餡のとろみに最初は違和感があるが、そのうち癖になってくる。
満腹になって、桜色に染まる鴨川を眺めながら帰路につくひとときは、まさに値千金だった。
(河田剛)
100年後に残したい名店:店舗情報
店名 | 篠田屋 |
住所 | 京都府京都市東山区三条通大橋東入大橋町111 |
電話番号 | 075-752-0296 |