読者ラーメンコラムvol.14

「ラーメン自伝のおすすめ」

妻が休日出勤でいない日、初めて4歳の息子と二人でテイクアウトのラーメンを食べた。1年前はうどんをこぼしながら食べていた息子が、スープから上手に箸で麺をすくって食べている成長に心がじんわりと温かくなっていった。自分によく似た横顔が一生懸命にラーメンをすすっているのを横目に、目の前にある器から少し伸びた麺を口に運ぶと幼いころ彼と同じようにラーメンをすすっていた情景がよみがえった。湯気に眼鏡を曇らせながら私は静かに目を閉じた。

私が初めてラーメンに出会ったのは、実家の近くにある町中華の出前ラーメンであった。初めて食べたラーメンは、祖母が作るうどんと蕎麦にはない衝撃的な旨さが胸を貫いた。人間の慣れは怖いものでそれから数年たつと出前の伸びきった麺に嫌気がさしており、中学にあがる頃には炒飯一択となっていった。高校入ると友人たちと外食をするケースが増えてきたが、塾の近くにあった「ラーメンショップ」のラーメンが大好きであった。固めでつるみがある麺、濃厚で塩味の強い油の甘さも感じるスープ、ごま油の香りとやや柔らかめのネギ、ジューシーな肉汁を感じることができるチャーシュー。口の中でマリアージュを起こし、底知れぬ味の広がりを感じた。

私がラーメンに更にハマったきっかけは、大学生のころに地元にできた「つけめん102」である。それまでつけめんを食べたことがなかった私は、このモチモチの太麺、濃厚なうま味が濃縮している粘度が高いスープ、焼いた石をいれてつけ汁を温めなおすというエンターテインメント性、その全てに心を奪われた。「つけめん102」で並んでいる時のたわいもない友人との時間も今では最高の思い出である。つけめんというジャンルを知った私は、そこからつけめんの虜となった。

そして社会人になり、勤務地の近くにできた「東京アンダーグラウンドラーメン 頑者」のつけめんにもハマり、週1で通っていた。仕事がうまくいった日、たまには冒険してみるかと「担々あえめん」を頼んでみた。これがまたうまかった!!うどんのような太さの強いコシがある麺に、胡麻風味が強く、程よい辛さを感じる汁なし担々麺。一瞬で仕事の達成感は消え、ラーメンといえばスープがあるのが当然と思い、過ごしてきた自分をぶん殴りたくなった。そして今度は汁なし麺を追い求めるようになった。私の人生はラーメンによって満たされ、ラーメンのおかげで素敵な思い出がある。

走馬灯のように浮かんできたラーメンたちに、ラーメンの魅力はやはりこの多様性と奥深さにあると感じた。私の人生を彩ってくれたさまざまなラーメンたちに感謝と同時に我が息子にも素敵なラーメンとの出会いがあることを切に願った。たまには自分のラーメン史を思い返すのも楽しいのかもしれない。

(ノンカフェイン大好きおじさん)