ラーメン史コラムvol.10

入〆「ラーメン」

入〆「ラーメン」

『東北のご当地ラーメンの発祥と発見~後編~』

【青森県】

青森市を中心とした津軽地方では、「津軽中華そば」が人気を集めている。煮干や焼干を中心にした醤油味のスープは煮干や焼干だけで採っている事も少なくない。「津軽そば」からの影響も受けていて、1902(明治35)年創業の老舗蕎麦店「入〆」が大正時代から中華そばを販売していたとされる他、戦後すぐに「くどうラーメン」「鳴海中華そば」「まるかいラーメン」などの老舗が創業した。

【秋田県】

秋田県では、横手市(旧十文字町)に伝わる「十文字ラーメン」が有名。地元では「十文字中華そば」とも呼ばれている。あっさりした和風スープに無かん水の細縮れ麺が特徴のラーメン。元祖とされる「マルタマ」は1934(昭和9)年に開業しており、他に「三角そばや」「丸竹食堂」が老舗として知られている。

 

マルタマ「中華そば」

マルタマ「中華そば」

【岩手県】

盛岡市では「盛岡三大麺」が人気を集めている。「わんこそば」「冷麺」「じゃじゃ麺」の3種類で、いずれも中華麺を使った麺料理ではないが、「じゃじゃ麺」は中国料理の麺料理にルーツを持っている。発祥の店である「白龍」は旧満州の家庭料理だった「炒醤麺」をベースに、1953(昭和28)年頃に「じゃじゃ麺」の味を確立した。
また、三陸地方の宮古市や釜石市などでは煮干しを使ったラーメンが広まっている。1951(昭和26)年に創業した釜石市の中華料理店「新華園」が提供する、極細麺の中華そばのスタイルが人気を集めている。また、この地域の食堂では、海藻や貝などを入れた「磯ラーメン」が自然発生的に広まっている。

白龍「じゃじゃ麺」

白龍「じゃじゃ麺」

【宮城県】

東北地方の中心都市である仙台市では様々なラーメン店があるが、「ご当地ラーメン」と呼べる地域特有のスタイルは見当たらない。山形の「赤湯辛味噌ラーメン」のスタイルを受け継いだ店や、横浜の豚骨醤油ラーメンに似たスタイルの店が人気を集めている。中華料理店「龍亭」が1937(昭和12)年に販売開始した「涼拌麺」は、冷やし中華のルーツの一つとして知られている。
日本有数の漁港がある気仙沼市では、「ふかひれ」や「サンマ」を使ったラーメンの考案が始まっている。まだ歴史は浅いが、東日本大震災からの復興を目指す三陸地方では、ラーメンも有力な資源になっている。

国内でも恵まれた漁場に囲まれた東北地方では、煮干し・焼干し・海藻・サンマなど、様々な魚介類を使ったラーメンが広まっている。その一方で、山形県の内陸部では鶏を使ったご当地ラーメンが伝わるなど、それぞれの土地で馴染み深い食材が、ラーメンに使われている事が実感できるようになっています。

(山本剛志)

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