ザッツ☆エンターテイン麺ト!vol.6

映画「タンポポ」

映画「タンポポ」

『ラーメンと映画  その3』

ラーメンが主役

第3回の今回はラーメンが主役とも言える地位を占めている映画を取り上げたい。

「ラーメン」がタイトルに入った最初の映画は1967年、島耕二監督の「ラーメン大使」であろう。中国から恩人を探して来日した王さん(フランキー堺)がラーメン店「大来軒」に住み込みで働き始め、様々な騒動に巻き込まれるという作品である。原作は「どてらい男」、「細うで繁盛記」などで知られた花登筺。

映画「ラーメン大使」

映画「ラーメン大使」

しかし、何と言っても画期的な作品は1985年の伊丹十三監督「タンポポ」であろう。当時、「愛川欽也の探検レストラン」というテレビ番組で、荻窪の「春木屋」と「丸福」に挟まれ、目立たない存在だった「佐久信」を人気店に仕立て上げる企画があり、伊丹監督はそれを見てこの作品を思いついたという。

ラーメン屋の未亡人(宮本信子)を通りすがりのタンクローリー運転手(山崎努)と助手(渡辺謙)が手助けし、店を再生する。安岡力也、加藤嘉、大滝秀治といった面がそれに協力する。ラーメンの作法を語る先生(大友柳太朗)も登場する。合間には本筋と関係ない食のエピソードが挿入され、役所広司、岡田茉莉子、中村伸郎など豪華なキャスティングであった。

伊丹監督はグルメとしても知られ、エッセイも多数執筆していただけに全編にわたって食に対するフェティシズムに溢れ、その後の映画やドラマにも影響を与えた。なお、撮影は当時営業していた「春木屋」の軽井沢支店で行われた。

「タンポポ」へのオマージュとして2008年に製作されたのがロバート・アラン・アッカーマン監督による米国映画「ラーメンガール」である。恋人を追って来日したアビー(ブリタニー・マーフィ)は前住(西田敏行)の作るラーメンに魅せられ、弟子入りする。そしてライバルの宇田川(石橋蓮司)と対決することになる。前住、宇田川の師匠であるラーメンの達人役として山崎努が出演している。日本のラーメンが海外で認知され始めた時期に製作された映画として貴重である。

2017年のエリック・クー監督による日本・シンガポール・フランス合作映画「家族のレシピ」では高崎市でラーメン店を営む真人(斎藤工)が父の遺品の中から幼い頃に亡くなったシンガポール出身の母の写真、レシピなどを見つけ、シンガポールへと旅立つ。ラーメンと肉骨茶が物語の中で重要な役割を果たしている。「けいすけ」グループの竹田敬介氏が料理の監修を務めている。

2018年の熊谷祐紀監督「ラーメン食いてぇ!」は林明輝の人気コミックの映画化である。妻を亡くしたラーメン店「清蘭」の老店主(石橋蓮司)は閉店を決意するが、孫娘( 中村ゆりか)とその親友(葵わかな)が店の再建に立ち上がる。「清蘭」のモデルは林明輝の実家、高崎市のラーメン店「清華軒」である。

実在のラーメン店主をモデルにした映画もある。2011年の瀬木直貴監督「ラーメン侍」は久留米「大砲ラーメン」の店主香月均氏のコラムが原作で、父の死去に伴って店を継ぐことになった光(渡辺大)の奮闘が描かれている。「支那そばや」の佐野実氏、「一風堂」の河原成美氏も顔を見せている。

近年目立つのはラーメン店主のドキュメンタリーである。2013年の印南貴史監督「ラーメンより大切なもの」はラーメン界のレジェンド、東池袋大勝軒の山岸一雄氏が対象になっている。2017年の重乃康紀監督「ラーメンヘッズ」は「中華蕎麦とみ田」の冨田治氏に密着取材をした作品である。2021年の小林真里監督「RAMEN FEVER」は「中村屋」、「AFURI」の中村兄弟のファミリーヒストリーを中心に海外のラーメン事情も現地取材した意欲作であった。

映画「 RAMEN FEVER」

映画「 RAMEN FEVER」

ラーメンは日本の食文化として海外にも浸透している。ラーメンを主題に据えた映画は増えることはあっても減ることはあるまい。

【その4に続く】

(河田剛)