日本ご当地ラーメン総覧vol.6

日本ご当地ラーメン総覧

第6回『秋田県・山形県のご当地ラーメン』

【秋田県】

秋田県で比較的知名度が高いご当地ラーメンとして、十文字町(現:横手市)の「十文字ラーメン」が挙げられる。煮干しや焼干し、鰹節などを使って澄んだあっさり醤油味のスープ。かん水を不使用、もしくは控えめにした細めの手揉み麺はチリチリした食感がある。古くから営業している「マルタマ」「丸竹食堂」「三角そばや」の3店舗が有名で、中でも「マルタマ」は1934年創業の歴史を持つ。

稲庭町(現:湯沢市)は「稲庭うどん」で有名。その老舗製麺所がその製法を元に考案したのが「稲庭中華そば」。ツルツルした食感が特徴で、東京の人気店などに乾麺を卸している。一時期、秋田市にもその麺を使うラーメン店が出店していた。

秋田市で知られているのは「江戸系ラーメン」。醤油ラーメンの上に赤い辛味が乗っていて、それを溶きながら味を変化させる。発祥の店「大江戸」や、味に類似点がある「小江戸」「仲江戸」からその名がついた。「大江戸」は2022年に閉店したが、2024年に場所を変えて再開した。

ラーメン小江戸(並)

北東部の小坂町では、1970年頃に誕生した、とんかつを乗せた「かつラーメン」が飲食店で提供されている。また、中央部の五城目町では天かすを乗せた「天ぷら中華」が提供されている。

奈良岡屋(かつラーメン)

【山形県】

近年、「ラーメン消費量日本一」の話題で取り上げられる山形。総務省の家計調査は県庁所在地と政令指定都市を対象としている為、「日本一」の対象は山形市になる。盆地で夏は暑い山形市では「冷やしラーメン」が生まれ、冬でも食べる人が多い。蕎麦屋の「栄屋本店」で1952年に考案され、人気メニューとして広まった。

山形市以外の各地にも、様々なご当地ラーメンがある。知名度が高いのは「米沢ラーメン」と「酒田ラーメン」。米沢市では大正中期に屋台からラーメンが広まり、手揉みを加えた低加水の縮れ麺を、鶏と煮干しを使ったスープに入れた「米沢ラーメン」が広まった。

そばの店 ひらま(中華そば)

一方で酒田市では大正末期にラーメン店が誕生し、ワンタンメンで人気を博した店が出た事で、ワンタンメンを提供する店が増えていった。鉄の棒で延ばす自家製麺に、煮干しや焼干しなどの魚介系素材を加えた醤油味の店が多い。1990年に「酒田のラーメンを考える会」が設立され、2023年に第1回が開催された「日本ご当地ラーメン総選挙」で優勝を果たした。

ワンタンメンの満月 酒田本店(ワンタンメン)

赤湯町(現南陽市)からは、東北で初めて味噌ラーメンを提供した「龍上海」の「からみそラーメン」が広まっている。赤味噌に唐辛子やニンニクなどを合わせた「からみそ」を味噌ラーメンに乗せている。

長井市では、チャーシューに馬肉の醤油煮を使った「馬肉チャーシューラーメン」、天童市では蕎麦店の賄いから生まれた蕎麦つゆベースの「鳥中華」、河北町では親鶏を使う「冷たい肉そば」を中華麺に変えた「肉中華」、新庄市では鶏モツを具に使った「とりもつラーメン」と、様々なスタイルが存在している。

また、鶴岡市は同じ庄内地方の「酒田ラーメン」の影響を受けつつも、節類を使った「鶴岡節系ラーメン」を提供する「鶴岡麺武士会」という団体も設立されている。

(山本剛志)