
「大貫本店」
阪神尼崎駅近くにある大貫本店は現存する最古のラーメン店とも言われている。大正元年(1912年)に千坂長治氏が神戸居留地で創業し、その後尼崎に移転、現在は四代目の千坂創氏が経営を担っている。一見、町の中華料理店のような店構えだが、メニューには随所にこだわりがある。

中華そばの麺は初代が中国の料理人から学んだ卵入りの麺を足で踏む製法を継承している。啜ると独特の弾力がある。スープの元ダレは創業以来100年以上にわたって継ぎ足しているという。コクのあるスープである。もう一つの人気メニュー、やきめしも同じ元ダレでぱらりと炒めてあり、美味しい。

この店には他にもユニークなメニューがある。1957年には菜湯麺というタンメンをぽん酢につけて食べる、つけ麺の変形とも言えるものを発売した。山岸一雄氏が中野大勝軒で特製もりそばを考案した2年後のことである。残念ながら4年前にメニューから外してしまったそうだが、復活させてほしいものである。
また、1952年には冷やした麺を胡麻を入れた冷たい醤油ダレにつけて食べる冷麺を発売し、幾つかのバリエーションを加えながら現在も提供を続けている。
歴史と独自性を兼ね備えた店で、さらに100年の歴史を刻むことを期待したい。
(河田剛)