日本ご当地ラーメン総覧vol.4

日本ご当地ラーメン総覧

第4回『"三大"だけじゃない北海道のご当地ラーメン』

前回のコラムでは、「北海道三大ラーメン」を紹介したが、北海道には他にも様々なご当地ラーメンがある。

「三大」に続く、北海道四番目のご当地ラーメンとして有力なのは「釧路ラーメン」。大正時代、横浜から来た料理人が伝えたラーメンがルーツとの説があり、昭和初期の屋台を経て、釧路の人たちに合う味になったとされる。特徴は鰹節で採った出汁を使う澄んだ醤油味で、鶏や豚をスープに加えない店もある。麺は縮れた細麺で、港に入った漁師たちに早くラーメンを提供する為に細麺が採用されたとも言われている。釧路以外での知名度は高くなかったが、釧路市民やラーメン店などが2000年代にアピールして、「北海道四大ラーメン」に数えられる事が増えている。

味の大王

味の大王

もう一つ、四大ラーメンに入る事があるのは道南の「カレーラーメン」。1965年に苫小牧市の「味の大王」で考案されたのがきっかけで、弟子が室蘭市に出店。市内でカレーラーメンが徐々に広まり、2006年には「室蘭カレーラーメンの会」が発足し、カレーラーメンを観光資源にする取り組みが進められている。発祥地である苫小牧市でも2013年「とまこまいカレーラーメンMAP」が公開されている。室蘭・苫小牧とも、カレー味である以上の細かい定義はない。両都市でそれぞれに活動している為、ご当地ラーメンとしての統一した動きはないものの、「塩・醤油・味噌」に次ぐ味として、「カレー」が「北海道四大ラーメン」とされることもある。

ご当地ラーメンを新たに宣言し、町おこしの起爆剤にしようとする動きは全国に広まっているが、その先駆けとも言えるのが旭川市の東にある上川町の「上川ラーメン」。1989年、町内でラーメンを提供している食堂全店舗が加盟した「上川町ラーメン日本一の会」が設立され、町外へのPRを行ってきた。味の定義はないが、大雪山麓の湧水を使ったラーメンが、自然豊かな町で作られる事で「日本一ラーメンのおいしい町」を名乗っている。

また、既存の料理と組み合わせたご当地ラーメンもある。「旭川ラーメン」が人気の旭川市では養豚が盛んで、新鮮な豚モツを使った「ホルモン」が人気。そこで、醤油ラーメンに柔らかいホルモンを乗せた「旭川ホルメン」が2012年に登場した。

道央の芦別市では、昭和30年代に開業した食堂で提供された「ガタタン」が人気を集めた。豚骨・鶏ガラをベースにした、とろみある具だくさんのスープで、そこに中華麺を入れた「ガタタンラーメン」も登場している。

また、岩内町の蕎麦店で生まれたのは「天ぷらラーメン」。後志地域の食堂やレストランで提供されるようになり、あっさりしたスープにかつては「かき揚げ」を乗せていたが、1980年代から、見栄えの良い「海老天」が乗るようになった。

一方で、地元の農産物・海産物を活用する目的で考案されたご当地ラーメンもある。酪農が盛んな中標津町の「中標津ミルキーラーメン」は牛乳を100cc使う事、オホーツク海に面したエリアで取り組んでいる「オホーツク干貝柱ラーメン」では、ホタテ干貝柱など、このエリアの農産・海産物を使うことなどが定められている。

利尻らーめん味楽

利尻らーめん味楽

北海道の北限には、2つのご当地ラーメンがある。「稚内ラーメン」は、豚骨ベースの澄んだスープと、利尻昆布を使った出汁をブレンドしていて、塩味と醤油味で提供している店が多い。その利尻昆布が獲れる利尻島には「利尻ラーメン」がある。島の海岸にも漂着する、高級食材の利尻昆布をスープにふんだんに使ったり、麺に練り込むことで昆布の旨みを強調している。「利尻らーめん 味楽」は、新横浜ラーメン博物館にも出店している。

(山本剛志)