ラーメン史コラムvol.14

三吉屋

三吉屋

『新潟四大ラーメンの歴史』

ラーメン処として知られる新潟県には、数多くの個性的なラーメンがみられる。今回は4種類のご当地ラーメンの歴史を中心にとして、新潟県の特色あるラーメンを紹介します。

【新潟あっさり醤油ラーメン】

新潟県で初めてラーメンを提供したとされるのは、1927(昭和2)年に新潟市の繁華街、古町で創業した「保盛軒」。屋台から始まり、後に店舗を構えた。昭和30年代に入って、「蓬来軒」や「三吉屋」が誕生し、煮干しを強く感じるスープに極細麺を合わせた「新潟あっさり醤油ラーメン」と言われるスタイルが定着していった。

 

こまどり

こまどり

【新潟こってり味噌ラーメン】

「あっさり醤油」と同じ新潟市だが、こちらは旧巻町(現・新潟市西蒲区)が発祥の地。食堂として営業していた「こまどり」が、1973(昭和48)年にメニューにラーメンを加えたのがきっかけ。たっぷりの野菜を使い、こってり味の味噌ラーメン。出前した際、味が濃すぎても困らないように割りスープをコーヒーカップに入れて提供したのが、今のスタイルに繋がっている。「東横」「東光」などの店が独立した他、その味にインスパイアされたラーメン店も多い。

福来亭

福来亭

【燕三条背脂ラーメン】

燕市と三条市にまたがって広がる、煮干しスープにたっぷりの背脂を振りかけたラーメン。中国出身の徐昌星さんが、1933(昭和8)年に燕で開業した「福来亭」が発祥とされている。出前先の工員たちから味の濃いラーメンを求められ、スープが冷めないように背脂をかけ、出前しても伸びない極太麺を使うようになった昭和30年代に、今の味が生み出された。
このスタイルで現在人気を集めている「杭州飯店」は、「福来亭」創業者の息子が、1977(昭和52)年に開店。この店名は、中国杭州出身の父が名付けたかった店名との事。現在は長岡市や新潟市、県外にもこのスタイルのラーメン店が広まっている。
青島食堂

青島食堂

【長岡生姜醤油ラーメン】

県央の長岡市では、スープにたっぷりの生姜を使った濃口醤油味のラーメンが人気を集めている。その元祖と目されているのは、1963(昭和38)年創業の「青島食堂」。最近では豚骨の臭みを消す効果と体が温まる効用が注目されて、県外でも人気を集めている。
カレーラーメン

カレーラーメン

【"四大ラーメン"の誕生とその他の地ラーメン】

新潟県に様々なスタイルのラーメンがあると話題になったのは2000年代の事で、タウン誌「新潟 こまち」のラーメン特集で、ラーメン評論家の石神秀幸が「新潟四大ラーメン」として定義した事で、その知名度は更に高まる事になった。その後も様々なラーメンが考案されるなどしたが、2010年代に入り、三条市が地元に広がっているカレー味のラーメンが、戦前から提供されているものとして、「三条カレーラーメン」としてアピール。現在はこれを含めて「新潟五大ラーメン」と呼ぶことも多い。
また、地元で人気があったり、新たに考案した地ラーメンが多くあるのも新潟県の特徴。「麻婆麺(新潟市)」「豚骨醤油ラーメン(上越市)」「白味噌ラーメン(上越市)」「とん汁ラーメン(妙高市)」「もつラーメン(新発田市)」「雪室酒かすラーメン(上越市)」「あんかけラーメン(阿賀町)」などがあり、今後に向けて注目が集まっている。
「四大ラーメン」で新潟県は中部地方で随一のラーメン処と認識されるようになったが、四大ラーメンがそれぞれに、それ以外のラーメンも新潟県内で話題になり続けています。それだけに、新潟県のラーメンは様々な魅力を常に秘めているといえるでしょう。

(山本剛志)