ラーメン史コラムvol.1

金龍菜館

「水戸黄門とラーメン」

「ラーメンを日本で最初に食べた人物は誰か?」という質問には、水戸黄門で知られる徳川光圀が一つの説として知られている。

時代劇の「黄門様」と違い、実際の光圀公は水戸に住まい、関東地方を出る事はほとんどなかったという。その一方で歴史や古典の研究を行ってきた光圀が招いた明の儒学者が献上した2つの品が、「日本初のラーメン」という逸話を後世に残すきっかけになった。

一つはレンコンの粉。かん水の代わりに小麦に混ぜ込む事で、中華麺特有のコシを出す事ができる。もう一つは豚モモ肉を使った中国式のハム。スープの出汁として使う事もあったという。光圀の趣味には「うどん打ち」もあり、家臣にうどんを振る舞っていた記録がある。

光圀が中華麺を食べたという明確な記録はないが、「光圀が明からの客人をうどんでもてなし、返礼に中華麺を食べたのではないか」という想像が広がり、「ラーメンを日本で最初に食べた人物」としてのイメージが固まった。

現在、茨城県水戸市には「水戸藩らーめん」を提供している中華料理店がある。写真は、そのきっかけとなった「金龍菜館」の一品。レンコンの粉と中国ハムを使い、「当時の光圀公はこういうラーメンを食べていたのではないか」と、当時の文献や後年の研究を元に作り上げたという。別皿の「五辛(ネギ・ニラ・にんにく・生姜・らっきょう)」は、中国では五臓の気を発する薬味として重用されていたとのこと。

食糧事情を考えれば、今食べる「水戸藩らーめん」は江戸時代の一杯とは違う味かもしれないが、「黄門様がこんなラーメンを食べていたかも」と、想像しながらいただく一杯は楽しいものです。

(山本剛志)