読者ラーメンコラムvol.11

凪

「ご当地ラーメンの火を絶やさぬために」

私たちの愛するラーメンが日本に生まれて100年以上。現在、全国では様々なご当地ラーメンを楽しむことができますが、昨今、高齢化や後継者不足のため、閉店となるお店も多々あるようです。
「ご当地ラーメンがもし食べられなくなってしまったら・・・」そんなことを考えたことはありますか?

幼少期からラーメンが大好きだった私。熊本県出身で、豚骨ラーメンを食べて育ちました。オススメは熊本市北区の『大黒ラーメン』。すっきりとしながらも旨味がたっぷりの豚骨スープに焦がしニンニクと中太ストレート麺。ド直球の熊本ラーメンです。店内は食堂のような雰囲気で、元気な女性スタッフが迎えてくれるのも特徴。東京に住んでいる今でも、熊本に帰省するたびに訪れ、そのたびに元気をもらっているお店です。
“豚骨ラーメン王国” 九州から出たのは大阪の大学に進学した時です。博多をはじめ、九州在住の方には「豚骨ラーメン以外はラーメンじゃない」と話される方が多くいます。私もかつてはその1人でしたが、“くいだおれの街” 大阪で醤油や塩、味噌のラーメンから、つけ麺、油そばまで多様なラーメンを好きになり、今ではすっかりジャンルを問わず食べ歩きを楽しんでいます。

大学卒業後は一度、熊本にUターン就職をしました。当時はまだ熊本ラーメンや豚骨ラーメンのお店がほとんどで、私は「豚骨ばかりで飽きちゃうなぁ」なんて呟きながら「非豚骨のラーメン屋が新しくできた」と耳にすると、目を輝かせながら必ず足を運んでいました。
そんな私の考えが変わったのは数年後。旅行や出張で熊本を訪れる友人から「美味しいラーメンを教えて欲しい」と言われることが増えてきたタイミングでした。「えーと、どこをオススメしようかな?」あれこれ考えてはみるものの、自信を持って勧められる店があまりありませんでした。
当時、熊本の中心市街地では、新横浜ラーメン博物館にも出店している老舗熊本ラーメン店『こむらさき』の店舗の一つが再開発の影響で閉店となったことや、同じく老舗の『こだいこ』が店主さんの高齢化のため閉店となったことなどもあり「美味しい老舗の熊本ラーメン」の選択肢が少なくなりつつあったのです。

私はそのとき初めて、熊本ラーメンの将来に危機感を覚えました。外食の際に何を食べるかはもちろん個人の好みであり、自由なのですが、熊本ラーメン以外のラーメン店が増えて人気になることと、熊本ラーメンが食される機会が減ることは基本的には同義です。新店ができる陰ではどこかで老舗店が閉店しているかもしれません。当たり前のことではあるのですが、大事な視点だと思っています。
思い出の味、食べるとホッとする味。ラーメン好きの方ならば、故郷にそんなラーメンが一つはあるのではないでしょうか。私にとってはそれが『大黒ラーメン』。ラーメンが多様化することは大歓迎ですが、熊本ラーメンが食べられなくなることは困ります。ご当地ラーメンは食文化であり、その地域の歴史でもあります。叶うならば、この先もずっと食べ続けたいですよね。

熊本ではその後、国内外からの観光客が増えるのにつれて、有名老舗店が中心市街地に支店を出したり、熊本ラーメンを新たにメニューに加える店が増えたりしています。コロナ禍が落ち着いたら、また多くの方に熊本に遊びに来てもらって、熊本ラーメンが盛り上がると嬉しいですね。
私も熊本、東京ともに流行りのラーメン店だけではなく「老舗」と呼ばれるようなお店に足を運ぶことが増えました。創業当時の苦労話や、自分が生まれる前の街並み。そんな昔話を聴きながらラーメンを食べるのも楽しいひとときです。ご自宅の近くにご当地ラーメンや行きつけのお店があるみなさんは、ぜひ一度、店主さんに話しかけてみてください。
自分の住んでいる地域をもっと好きになる、面白いお話が聴けるかもしれませんよ。

(あっきー)