「カラシビ味噌らー麺 鬼金棒」
~ 三浦 正和さん ~
【食べ手の目線で考える進化】
── 味に対する想いはどのように考えていますか?
そうですね。やっぱ味に対する思いは常に進化し続けること。例えば山椒の増しの量を先月1.6倍くらいにしました。なぜかと言うと、オープンした当初はお客さんも山椒に慣れていないだろうから増しはこれで充分だろうと。だけどお客さんは進化しているんですよ。今ではいろんなコンビニでも痺れ食えるし、松屋でも痺れ麻婆豆腐とかやっているし、いろんなとこで痺れが食べられるようになっているから、この増しの量じゃ増しじゃねぇってなっちゃうじゃないですか。
あとは、進化もタイミングを見てやったりしてて、実際に前回やったのが、価格改定でラーメン850円を880円に値上げさせたんですよ。ただ値段を上げるだけじゃなくて、それまではチャーシュー35gだったのを50gに変えたんです。自分自身が食べてて、35gじゃちっちぇーなってずっと思ってたんですよ。一杯食べててチャーシューをもっと食べてえなって、お客さんとして、食べ手として。そういう意味では自分が食べて何がいいかな、美味しいと思うかというとこですよね。
── ちなみに、増しのときだけどんぶりを赤くしていますか?
そうなんですよ。抜き、少なめ、普通が白、増しが赤、鬼増しが黒のどんぶりなんですよ。それはなんでかと言うと、変えた一番の理由は提供間違いです。今までは食券を見ないとこれが増しなのか普通なのか分からなかったんですけど、絶対に間違っちゃいけないから何回も見ないといけないんですよ。
うちの作り方は4人前ずつしか作らないんですが、その4人前でカラやシビが抜き、少なめ、普通、増しって入っていたら、先ず、4丁分全部抜きにして、次に3丁分を全部少なめにして、2丁分を普通にして、最後1丁分を増しにするという作り方をしているので、注文が複雑だと何回も確認しないといけない。だけれどもどんぶりの色を見れば分かる。オペレーションを楽にするためにどんぶりを変えたんですよ。
── 辛さのインパクトのためかと思っていました。
もちろんそれだけではなく、一石二鳥三鳥みたいな部分で変えたら面白いし、きれいだし、鬼増しの人って優越感に浸りたいし。
── それ思いました、この人は辛いの食べているって思われるだろうなって。
それを含めたうえで全体を考えて、これにしたら面白いだろうなって。小技というか。
カラシビ味噌らー麺 カラ増し シビ増し
【三種混合麺】
── 三種混合麺という発想はどのように生まれたんですか?
もともと喜多方ラーメンとかの手打ち麺がすごく、このラーメンに合うなと思っていて、不揃い感が。不揃い感が何がいいって言うと、やっぱ柔らかいところがあったり、硬いところがあったりとか、そのバラエティがすごく食べていて最後まで飽きないというか。
── もともと一玉の中に3種類の麺が入っているんですか?だとすると、3つのピッチで作られている一つの切り歯から麺を切り出してまとめられているので、麺の茹で時間を太さによって変えられないですね。
そうなんですよね。だから食べる麺が、柔らかいのがあれば、ちょうどいいのもあるし、硬いのもある。まさにそこなんですよ。そのバラエティ豊かな食感を楽しむ、それがやりたかったんで。
でも、これがまた面白くて、最初切り歯を作る前に試作をやるときに製麺所からもらったのが、全部同じグラム数で一玉作ってもらったんですよ。そんで、実際によしこれで行こうって決めて、切り歯を作ってもらいましたってときに、オープンちょっと前に来た麺が、なんか食べていて違うんですよ。あれ、全然サンプルと違うなって。でも製麺所は同じですって言うんですよ。なんでかって調べたら、切り歯の作り方を間違えていたんですよ。
試作の時は同じグラム数で全部とっていたから、本数が全部違うんですよ。作った切り歯は全部同じ本数だったんですよ。だから太いのが多くなっちゃうんですよ。原因が分かって、切り歯を作り直してもらって。全部同じグラム数だけど、細麺の本数が多くなって、中ぐらいで、太い麺が少ないみたいな。それが美味しいというか、あの感じになるんですよ。
── 三種混合麺って、実は僕は初めてじゃないんですよ。かつて北九州の門司にみんずラーメンってお店があって、現在は小倉店があるようなのですが、そこは三種混合麺を出していたんですよ。ただ、そこは一玉ずつ太さが違っていて、茹でるときに混ぜるので、お客さんが3人来ないと二種混合麺になっちゃったりするんですよ。で、僕が行ったときは客が2人だったから2種類しか食べられませんでした。なので、鬼金棒はどうしているかなと思っていました。
でも、台湾店はあれですよ。仕込みの時に全部3種類混ぜて一玉ずつ作っています。
三種混合麺
【最初からあった海外へのビジョン】
── 現在、海外の方が店舗数が多くなりましたけど、鬼に金棒という日本らしいコンセプトで海外に打ち出せたのは良かったのではないかなと思いました。
たまたまですね。でも、オーストラリアで何の仕事しようかなって思ってラーメンやるって思った時に、ラーメンで世界に出ようと決めてたんですよ。最初から。だから麺屋武蔵って選択が出てきたのかも知れない。
── 逆に和みたいなところに?
そうです。世界中の人をラーメンで楽しませる、ハッピーにさせたいってのがあったんで。オーストラリアですごいいろんな国の人に会ってすごい面白いなって思ったんですよ。特にオーストラリアってところはすごく良い国で、オーストラリアに住みたいなってのがあったんですよ。ここに住みたい。そしたら何で住むって、そしたらラーメン屋をオーストラリアでできたら嬉しいなっていう、そういうのもありますね。
武蔵での湯切りとかも海外の人を意識してやっていましたからね。燕返しだってとにかく外国の人が喜ぶものは何だろうといつも考えていたからなんですよ。そういうのがあったんで、湯切りを燕返しでやったりしたら、侍みたいで外国の人は喜ぶだろうなとか。外国だったらどういう店作りしたらいいかなとか、そういう事ばっかり考えていました。
【これまでの10年、これからの10年】
── この10年を振り返るとどうでしたか?
10年ですねぇ~~~~。一言で言うと、楽しかったですね。常に楽しいっすね。今が一番。常に今が一番楽しと思っているので。
── 不安とかはあまりなく?
不安って、考えないっすね。不安なんて考えたらきりがないですからね。そっちに持っていかれちゃうだけなんで。だから、持っていかれないようにするために常に行動するとか、そういう風なことが、なんですかね、不安要素があるなら、不安要素をなくすためにそれを潰していくみたいな。なので、不安はないです。はい。
でも、最初のころはめっちゃありましたけどね。だからお客さんがなんで残したんだろうとか。最初のころはもう、お客さんが来ない時間帯は不安でしたよね。
── 次の10年はどのようにしていこうと考えていますか?
もっともっと世界中の人たちをラーメンでハッピーにするというミッションを変わらずやり続けるという意味では、世界の人たちというステージに変わっていくのかなというところですかね。
── オーストラリアに出す予定は?
今、アメリカとオーストラリアが最優先候補の国なので、10年以内には出しているんじゃないですか?だって、もう46歳なので、10年したら56歳ですよ。海外に5年ぐらいで出せたらいいですね。
世界中の人をハッピーにしていきたいですね。ラーメンで。もともと原点がそこなので。ラーメンでハッピーにしてそれを嬉しかったんで、世界中の人たちをもっとラーメンでハッピーにしたいなと。
── 本日はお話を聞かせていただき、ありがとうございました!
店主 三浦正和さん
(インタビュアー 加賀保行)
開店10周年「キセキの物語」:店舗情報
店名 | カラシビ味噌らー麺 鬼金棒 |
住所 | 東京都千代田区鍛冶町2-10-9 |