開店10周年「キセキの物語」vol.1(後半)

麺屋はなび

「麺屋はなび」

~ 新山直人さん ~

 

【お客さんとスタッフの喜びのリンク】

── 台湾まぜそばは今や北海道から沖縄まで広がっていますよね。そのなかで、お弟子さんの麺屋こころが東京で一気にブレイクしましたけど、東京進出が遅れたとか思っていないのかなと少し気になっているのですが。

全然思わないです。東京はほとんど興味ないですね。今はどんどん地方地方、田舎に田舎に出店したくて。

── どうして、あえて田舎なんですか?

誰もいないから。

── 誰もいないところに人を呼んでみせるって考えられているんですか?

いや、そうじゃなくて、いないって言ったっているんですよね。でも、みなさん錯覚して、人が多くいるところに出せば忙しくなるって思っていると思うんですよ。そういう場所はラーメン屋が既にいっぱいあるんですよね。ひしめき合っている中に出すのはお客さんが流れちゃうし、お客さんからしてもまた出来たぐらいのことですよ。だったら「え?!こんなところに麺屋はなびできたの?!うれしいな~」って言ってもらえるところに出店したほうが、喜びがリンクしますよね。うちもうれしい、お客さんもうれしい。そういうところで役に立てた方が、僕らは仕事をしていて張り合いがあるから。

── 確か、担々麺のお店も担々麺がない土地だと考えて出されたんですよね?既に店舗展開するなかであまりラーメン屋さんがないところに出店しているということですかね。

今は特に。で、店をわざと狭くする。大きくしたとしても高畑本店くらいで、これ以上大きくしない。

── それはどうしてですか?

空気がすぐ温まるまるから。臨場感。空間が広いと賑わいだとか、人の気で店が温まるのに時間がかかるんですよ。で、店長の気配り、目配りも店が狭いほうが行き渡りやすいですよね。

担々麺はなび 安城本店

 

【お腹が空いたときに食べたいのは中華料理】

── 台湾ミンチを作るときのポイントは香ばしさですか?修行をされた幸龍が香ばしいから。

そうですね。僕は幸龍で台湾ミンチを覚えているので。そこから自分流でずいぶん醤油を減らしたり改良はしましたが。幸龍や味仙って茹で上げた麺にミンチかけて、そのミンチにスープかけてラーメンになるので、醤油ダレみたいなものなんですよミンチが。醤油が濃いんですね。うちのラーメンというのは醤油ラーメンにかけても味が濃くならない。うまみは増すけど。でも、幸龍の台湾ラーメンは僕好きですね~。あれほんとに美味しい。

── あのバランスとった感じ。辛すぎず、ちゃんとダシ感もあって美味しいですよね。

そうなんですよ。あれ旨いですよね。

── 幸龍にはどのような流れで修行に入られたんですか?

家の目の前だったんですよね。幸龍は僕が15、16歳のころから人気で毎日並んでたんですよ。僕は、麻婆飯旨いな、ここの美味しいなぁ~って思ってて。僕も料理が好きだったんで、周富徳さんの本とか買って、中華鍋買って、友達呼んで振舞ったりしてたんですよね。で、そんなことやっているんですよ~って幸龍の大将と話ししてて、学生のころアルバイトに入ったこともあって。
で、まぁ、高校にあまりにも不真面目で行っていなかったので、出席日数が足りないから学年を上がれないよってことになったんで、明日からプー太郎だな~って思って、それじゃぁ明日から仕事しようと思って。

── 切り替え早いですね。

なので学校をやめた次の日から修行が始まりました。中華料理を始めたのは、お腹が空いたときに食べたいなと思うのが中華だったんですよ。だから中華料理人になろうと思ったんです。

── もともと中華が好きだったから自分でも作っていたってことなんですね。

なんかかっこいいな~っと思ったんですよ、鍋一つでカンカンカンカンカン、ッザーっていうのが。なんてかっこいい料理なんだ~って思ったんですよね。

── 中学生のころからやっていたんですね。早いですね。

小学生のころから家庭料理をやっていました。玉子焼きから始まったんですけどね。小学校3、4年かなぁ。お母さんかお父さんに玉子焼きを作ったら、めちゃくちゃ美味しいって褒められたのが衝撃的で。「え?料理ってこんなにうれしい気持ちになるんだ。もっと美味しく作りたい」から始まったんです。

台湾ラーメン 幸龍の台湾ラーメン

 

【目標は決めない。できるだけ頑張る】

── いま何店舗ありますか?

37、38ぐらい?

── 10年間でですもんね。凄いですよね。10年前の自分は10年後をどう想像していましたかね。

毎日が必死で。目標を設定しないようにしているんですよ。例えば目標100店舗とか言うと、90店舗目ぐらいで息切れしてくるんで、できるだけ頑張りますと。自分のやる気が続く限りできるだけやりますって思っていた方がいいなぁって。なるべく増やしていこうって感じですね。

── 担々麺のお店を出したり、台湾カレーもやったり。今度は鶏白湯の店をやるんですよね?

やりたい。二郎もやりたい。今は台湾まぜそばと二郎を食べられるお店を考えています。今度出店するセントレアが鶏白湯と台湾まぜそばの組み立てで、前は担々麺と台湾まぜそばで、今は醤油ラーメンと台湾まぜそばなんですよ。で、次は二郎と台湾まぜそば。
なんで種類を出すかというと、その地域にあった組み合わせでやればいいから。大学前だったら二郎ですね。都会だったら鶏白湯。田舎だったら醤油。中立的なとこでもそこそこ行けるのが担々麺じゃないですか。

担々麺はなび 安城本店の台湾担々まぜそば

 

【世界中のなるべく多くの人の美味しい幸せを作る会社】

── これだけ大きくなっていくと会社の経営理念とかあると思うんですけど

会社の経営理念は「世界中のなるべく多くの人の美味しい幸せを作る」です。やっぱ、僕、毎日一回、美味しい幸せを感じたいんです。特に夜ご飯。自分のごほうび。「美味しいな~。いいな~。生きてて良かった~」って思いたいんですよね。なので、自分の作ったラーメンでみなさんの美味しい幸せを作れたらこんな幸せなことはないなって。誰かの「あ~美味しかった~いや~よかったわ~」っていうのを作り続けられるというのはめちゃめちゃいい仕事だなって思っているんですよ。それを妥協せずに拘って、美味しさ、それから美味しいだけじゃなくて幸せな思いをしてもらうためには接客。なので美味しい幸せを作るために一店舗一店舗愛されるお店にしなきゃいけないって拘ってやっているんですよね。

 

【お客さんに合わせて僕らも変わる】

── この後の次の10年間はどのように考えられていますか?

まぜそばはまぜそばであると思うんだけど、恐らく、醤油ラーメンがまた帰ってくると思うんですよね。素朴な中華そばが。だって、ラーメンは長生きのおじいちゃんの一生くらいしか歴史ないですよね。100年ですよね。でも、うどんは1000年ですよね。ラーメンは、食べ物の歴史としては赤ちゃんみたいなもんだと思うんですよね。なので、あれもいいよね、これもいいよねって思っても、なんだかんだ一番最初にできた醤油ラーメンかなと。ファッションじゃないですけど、回ってくると思うんですよ。濃厚系だとか、台湾まぜそばとか、鶏白湯だとか、つけ麺だとか、油そばだとか、いろいろ来るじゃないですか。でも、僕はラーメンは醤油でしょうって思います。茹で上げた麺の甘い香りに合うのは醤油なんですよね。塩かけて食べても美味しいですけど、やっぱ醤油の方があの甘さと醤油のキレでバランスがいいと思うんですよ。レアチャーシューとかも今出ていますけど、普通の醤油で炊いたチャーシューの方がうまいですよね。僕はね。なので、昔っぽい感じが戻ってくると思っているんですよ。

── 麺屋はなびでも何かそっちの方向でやろうと?

もうやっていますよね。常に醤油ラーメンの方にキューっとイメージが寄っていっているんで。

── 今出しているものをどんどんそちらの方向に変えていくってことですか?それともガラっと変えちゃうんですか?

ガラっとは変えないです。お客さんからの人気を得続けるために、お客さんに合わせて僕たちも変わっていかないと人気って維持できないんですよ。この台湾まぜそばだって少しずつ変わっていますからね。みなさんがわからないように。

── 今出している醤油ラーメンがみなさんのニーズに合わせていくと昔っぽい感じに向かうだろうということですかね?

そうですね。そう思います。

 

【お客さんのために尽くせば必ず愛される】

── 今、例えば今年オープンする店に10年の先輩として言葉をかけるとしたら、どのような言葉をかけますか?

いや、そんな僕はねぇ。そういう立場にないから。いやぁ~そんな偉そうなこと言えないなぁ・・・(笑)

── 何かアドバイスは?

アドバイスかぁ。いや、まぁ、、、、うん、まぁ、、、、どの商売においても言えることで、どうやったら成功するのって言われたときに僕はいつもこう答えるんですよね。欲しがっているものを売るから売れるって。ラーメンも欲しくないものを作ったって売れないんですよ。僕が好きなラーメン作ったって売れないんです。なんだこれ精進料理みたいなラーメンはってなっちゃうわけで。
で、ラーメンってのはスナックフードだと思っているんです。サクッと安く食べられて旨い、これがラーメンだと思っているんで、お客さんが欲しがっているもの、欲しがっている接客をするから繁盛するんじゃないですかね。自分がやりたいことは後でいいんじゃない?って思います。お客さんのために尽くせばかならず愛されると思いますよって感じですよね。アドバイスなんて、そんなことね、僕、言えないですよ。。。

── 最後に答えにくいことを聞いてしまいましたが、たくさんのお話ありがとうございました。益々のご活躍を楽しみにしています!

大将 新山直人さん

(インタビュアー 加賀保行)

開店10周年「キセキの物語」:店舗情報

店名麺屋はなび
住所名古屋市中川区高畑1-170
電話番号052-354-1119
※店舗情報は2018年4月現在のものです